GX用語解説:HYBRIT
HYBRITとは
HYBRIT(Hydrogen Breakthrough Ironmaking Technology)とは、スウェーデンの鉄鋼大手SSAB、鉄鉱石大手LKAB、電力大手Vattenfallの3社が共同で進める、水素還元製鉄の実証プロジェクトです。2016年に始動し、2021年には世界で初めて水素還元製鉄による鋼材の商業出荷を達成した、この分野における世界的な先行事例として知られています。
結論から言えば、HYBRITは「水素還元製鉄が絵空事ではなく実現可能である」ことを世界に示したプロジェクトです。グリーンスチールという言葉が広く使われるきっかけの一つにもなり、日本を含む各国の鉄鋼メーカーが自国での実証を加速させる契機となりました。
この記事の要点
実務での使われ方
HYBRITの成功は、鋼材を扱う世界中の企業にとって「水素還元製鉄は実用段階に入りつつある」という認識を広める契機になりました。自動車メーカーなど鋼材の大口需要者が、HYBRIT由来の鋼材を含む低炭素鋼材の調達を検討する動きも出ています。
日本の鉄鋼メーカーにとっても、HYBRITは技術的なベンチマークであり、日本国内での水素還元製鉄実証事業(グリーンイノベーション基金等の支援を受けたプロジェクト)を進めるうえでの参考事例として位置づけられています。スウェーデンが再エネの豊富さを活かして先行した点は、日本が水素調達コストの課題を克服するうえでの示唆にもなっています。
詳細説明
プロジェクトの体制
HYBRITは、鉄鋼メーカーのSSAB、鉄鉱石を供給するLKAB、電力を供給するVattenfallという、製鉄プロセスに必要な原料・エネルギーの各領域を代表する企業が連携する体制で進められています。この「川上から川下までの垂直連携」が、技術実証を早期の商業化につなげた要因の一つとされています。
スウェーデンという立地の強み
水素還元製鉄には大量のグリーン水素が必要であり、その製造には安価な再エネ電力が欠かせません。スウェーデンは水力発電を中心に再エネが豊富で電力コストが低いため、HYBRITはこの地の利を活かして先行できました。日本のように再エネ資源に制約がある国では、水素調達コストの低減が実用化の鍵になります。
中堅企業の最初の3歩
第一に、鋼材を扱う企業は、HYBRITのような先行事例を通じて低炭素鋼材の実用化の進展度を把握します。第二に、日本国内の水素還元製鉄実証事業の動向を注視します。第三に、将来の鋼材調達計画に、こうした技術動向を織り込みます。
2016年始動 → 2021年 世界初の水素還元製鉄鋼材を商業出荷
出典:HYBRIT(SSAB・LKAB・Vattenfall)
FAQ
Q1. HYBRITとは何ですか?
スウェーデンのSSAB・LKAB・Vattenfallが共同で進める水素還元製鉄の実証プロジェクトです。2021年に世界初の商業出荷を達成しました。
Q2. なぜスウェーデンで先行できたのですか?
水力発電を中心に再エネが豊富で電力コストが低く、水素還元製鉄に必要な安価なグリーン水素を確保しやすかったためです。
Q3. 日本にはどんな示唆がありますか?
水素調達コストの低減が実用化の鍵であることを示しており、日本国内の実証事業の技術的なベンチマークにもなっています。
Q4. 中堅企業に関係しますか?
鋼材を扱う企業は、HYBRITのような先行事例を通じて低炭素鋼材の実用化の進展度を把握し、将来の調達計画に活かせます。
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