GX用語解説:1.5度目標
1.5度目標とは
1.5度目標とは、地球の平均気温上昇を産業革命前(1850〜1900年)と比較して1.5度以内に抑えることを目指す、国際的な努力目標です。2015年に採択されたパリ協定では「2度を十分下回る水準に抑え、1.5度に抑える努力を追求する」と規定されており、その後の科学的知見の蓄積により、1.5度が実質的な世界共通の目標ラインとして扱われるようになりました。
結論から言えば、1.5度目標は「気候変動の被害を人類が管理可能な範囲にとどめるための、科学が示す限界ライン」です。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書により、2度上昇と1.5度上昇とでは自然災害・生態系・農業生産への影響に大きな差があることが示され、以降、企業の削減目標設定における事実上の基準になっています。
この記事の要点
実務での使われ方
企業がGHG削減目標を設定する際、「1.5度目標に整合した水準」であるかどうかが、投資家・取引先・NGOから問われる基準になっています。SBTi(Science Based Targets initiative)の認定を取得する場合、原則として1.5度水準に整合した削減目標を設定することが求められ、2度水準の目標は段階的に認められにくくなっています。
また、統合報告書やサステナビリティ報告書において「パリ協定の1.5度目標に整合」といった記載は、単なるスローガンではなく、具体的な削減率や目標年限とセットで検証可能な形で示すことが、投資家からの信頼獲得につながります。
詳細説明
1.5度と2度の被害の差
IPCCの特別報告書(SR1.5、2018年公表)によれば、2度上昇時と比較して1.5度に抑えた場合、サンゴ礁の消失リスクが70〜90%から99%超へと悪化する幅を大きく抑えられ、極端な高温にさらされる人口も大幅に減少するとされています。海面上昇の幅も0.1メートル程度抑制されると試算されており、わずか0.5度の差が生態系・社会に与える影響の大きさを示す根拠として、企業の目標設定にも援用されています。
カーボンバジェットとの関係
1.5度目標の達成可能性は「カーボンバジェット(炭素予算)」という考え方で議論されます。これは、気温上昇を一定水準に抑えるために人類が今後排出できるCO2の残り総量を指し、現在のペースで排出を続けた場合、1.5度に対応するカーボンバジェットは数年〜十数年で枯渇するとの試算もあります。この残余予算の少なさが、企業に早期かつ大幅な削減を求める根拠になっています。
中堅企業の最初の3歩
第一に、自社の削減目標が「2度水準」なのか「1.5度水準」なのかを確認します。第二に、SBTi認定を視野に入れる場合、1.5度水準での目標再設定を検討します。第三に、取引先や投資家向けの開示で「1.5度目標」に言及する際は、具体的な削減率・目標年を示せる状態にしておきます。
サンゴ礁消失リスク:70-90%(1.5度) vs 99%超(2度)
出典:IPCC「1.5℃特別報告書」(2018年)
FAQ
Q1. 1.5度目標とは何ですか?
産業革命前と比較した世界の平均気温上昇を1.5度以内に抑える、パリ協定に基づく国際的な努力目標です。
Q2. なぜ2度ではなく1.5度が重視されるのですか?
IPCCの特別報告書により、1.5度と2度の間でも生態系や社会への被害に大きな差があることが科学的に示されたためです。
Q3. 企業の目標設定にどう関係しますか?
SBTi認定など、企業の科学的根拠に基づく削減目標の多くが、1.5度水準への整合を前提とするようになっています。
Q4. 中堅企業は何を確認すればよいですか?
自社の削減目標が1.5度水準か2度水準かを確認し、SBTi認定等を視野に入れる場合は1.5度水準への引き上げを検討します。
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