GX用語解説:カーボンリーケージ
カーボンリーケージとは
カーボンリーケージとは、ある国・地域が排出規制を強化した結果、企業が規制の緩い国・地域へ生産拠点を移転し、世界全体で見た温室効果ガス排出量がかえって増加したり、実質的に減らないまま生産地だけが移動したりする現象です。「炭素の漏れ」とも呼ばれます。
結論から言えば、カーボンリーケージはカーボンプライシングを強化するうえでの副作用として警戒されてきた問題です。EUが導入したCBAM(炭素国境調整措置)は、まさにこのカーボンリーケージを防ぐことを主な目的とした制度です。
この記事の要点
実務での使われ方
カーボンリーケージは、政策設計の議論で使われる概念ですが、製造業にとっては実務上の競争条件にも関わります。自国の規制が厳しくなる一方、輸入品には同様の炭素コストがかからない場合、国内で脱炭素投資をした企業が価格競争で不利になる可能性があるためです。CBAMのような国境調整措置は、この不公平を是正する狙いを持ちます。
日本国内でも、GX-ETSや炭素税のようなカーボンプライシング制度を設計する際、鉄鋼・化学など国際競争にさらされる産業へのリーケージ対策(段階的な導入、無償割当など)が検討課題になっています。
詳細説明
なぜ起こるのか
カーボンリーケージは、国・地域ごとに排出規制の厳しさや炭素コストの水準が異なることから生じます。規制が厳しい地域で生産すると製造コストが上がるため、規制が緩い地域に生産を移す経済的な誘因が働きます。結果として、その地域の排出量は減っても、世界全体で見た排出量は変わらない、あるいは輸送や設備の非効率によりむしろ増えることがあります。
CBAMによる対策
EUが導入したCBAMは、鉄鋼・アルミなど特定品目の輸入時に、生産国での炭素コストの差を調整する課金を行う制度です。EU域内で炭素コストを負担する企業と、域外から炭素コスト無しで輸入される製品との間の不公平を是正し、カーボンリーケージを防ぐことを目的としています。
中堅企業の最初の3歩
第一に、自社の主要な輸出先・調達先がCBAMのような国境調整措置の対象品目を含むかを確認します。第二に、国内外のカーボンプライシング制度の動向(GX-ETSなど)を継続的に把握します。第三に、脱炭素投資による製造コスト上昇を、価格転嫁や生産性向上でどう吸収するかを検討します。
CBAM(EU炭素国境調整措置)
出典:欧州委員会
FAQ
Q1. カーボンリーケージとは何ですか?
排出規制の緩い国・地域へ生産が移転し、世界全体で見た温室効果ガス排出量が実質的に減らない、またはかえって増える現象です。
Q2. CBAMとの関係は?
CBAMはEUがカーボンリーケージを防ぐために導入した制度で、鉄鋼・アルミなど特定品目の輸入時に炭素コストの差を調整する課金を行います。
Q3. どんな産業で懸念されますか?
鉄鋼・化学などエネルギーを多く消費し、国際競争が激しい産業で特に懸念されます。日本のGX-ETS設計でも対策が論点になっています。
Q4. 中堅企業は何を確認すればよいですか?
自社の輸出先・調達先がCBAMなどの対象品目を含むかを確認し、国内外のカーボンプライシング動向を把握したうえで、コスト上昇への対応を検討します。
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