GX用語解説:移行リスク
移行リスクとは
移行リスク(Transition Risk)とは、社会が脱炭素へと「移行」していく過程で、企業が受ける可能性のあるリスクの総称です。気候関連の情報開示枠組みであるTCFDは、気候変動が企業に与えるリスクを「物理的リスク」と「移行リスク」の2つに大きく分類しており、移行リスクはその一方にあたります。
結論から言えば、移行リスクは「気候変動そのもの」ではなく「脱炭素へ向かう変化」から生まれるリスクです。規制の強化や技術の転換、消費者の選好の変化などが、対応の遅れた企業のコストや売上に影響します。中堅企業にとっても、取引先の脱炭素要請や炭素コストの上昇として、すでに現実味を帯び始めています。
この記事の要点
実務での使われ方
移行リスクは、気候変動が経営に与える影響を投資家や取引先に説明する場面で使われます。TCFDや、その内容を引き継いだIFRS S2(ISSB基準)に沿った開示では、自社が抱える移行リスクと、それにどう備えるかの説明が求められます。開示は大企業が先行していますが、サプライチェーンを通じて中堅企業にも情報提供の要請が広がっています。
リスクの大きさを見積もるには、将来の脱炭素の進み方をいくつかのシナリオに分けて影響を試算するシナリオ分析が有効です。炭素価格が上がった場合、規制が強化された場合など、複数の前提で自社への影響を確認します。
詳細説明
移行リスクの4分類
移行リスクは一般に4つに整理されます。第1に「政策・法規制リスク」=カーボンプライシングや規制強化による負担。第2に「技術リスク」=低炭素技術への転換に伴う設備・投資の負担。第3に「市場リスク」=脱炭素製品への需要シフトによる売上変化。第4に「評判リスク」=対応の遅れによる取引先・消費者からの評価低下です。自社にとってどの類型が大きいかを見極めることが出発点になります。
物理的リスクとの違い
移行リスクと対になるのが「物理的リスク」です。物理的リスクは、台風や豪雨、猛暑、海面上昇といった気候変動そのものが引き起こす被害を指します。脱炭素が遅れれば物理的リスクが大きくなり、脱炭素を急げば移行リスクが顕在化する、という関係にあり、企業は両方のバランスを見ながら対応を考える必要があります。
中堅企業の最初の3歩
第一に、4つの類型のうち自社に効きそうなリスク(例:炭素コスト、主要製品の需要変化)を洗い出します。第二に、シナリオ分析で影響の大きさを大まかに試算します。第三に、対応策を脱炭素経営の計画に組み込み、取引先からの開示要請にも答えられるよう整理します。
移行リスク(脱炭素への移行) / 物理的リスク(気候変動そのもの)
出典:TCFD提言
FAQ
Q1. 移行リスクとは何ですか?
脱炭素社会への移行に伴って企業が受けるリスクの総称です。TCFDは気候リスクを物理的リスクと移行リスクに分類しており、その一方にあたります。
Q2. どんな種類がありますか?
政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク、評判リスクの4つに整理されます。自社にとってどれが大きいかを見極めることが重要です。
Q3. 物理的リスクとの違いは?
移行リスクは脱炭素への変化から生じるリスク、物理的リスクは台風や海面上昇など気候変動そのものによる被害です。両者は表裏の関係にあります。
Q4. 中堅企業は何から始めればよいですか?
自社に効くリスク類型を洗い出し、シナリオ分析で影響を試算し、対応策を脱炭素経営の計画に組み込みます。取引先の開示要請への備えにもなります。
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