GX用語解説:SBTN(自然の科学的目標)
SBTNとは
SBTN(Science Based Targets Network)とは、企業や都市が自然への影響と依存を科学的根拠に基づいて評価し、淡水・土地・生物多様性などの分野で具体的な目標を設定するための国際的な枠組みです。気候分野のSBT(科学的根拠に基づく削減目標)の「自然版」にあたります。
結論から言えば、SBTNはまだ大企業・グローバル企業が先行して取り組む段階ですが、原材料の調達や立地を通じてサプライチェーン全体に波及します。森林・水・農水産などに関わる中堅企業は、取引先の自然目標に対応するデータ提供を求められる可能性があり、早めの理解が有利に働きます。
この記事の要点
- SBTN=自然分野の科学的根拠に基づく目標設定の枠組み。運営はScience Based Targets Network。
- 気候のSBTに対応する「自然版」。対象は淡水・土地・生物多様性・海洋の4領域。
- 目標設定は「評価→優先順位づけ→測定・設定・開示→行動→追跡」の5ステップで進む。
- 開示はTNFD、到達目標はネイチャーポジティブ・30by30と連動する。
- 大手の調達方針を通じて、原材料を供給する中堅企業にも波及する。
実務での使われ方
グローバル企業が自然に関する目標を掲げ、サプライヤーに対して原材料の由来や環境配慮を求める動きが始まっています。特に森林・水・農水産物を扱う企業では、調達方針や事業立地への配慮が取引評価に組み込まれ始めており、これは気候の脱炭素要請に続く「第2の波」として意識されています。
中堅企業にとっての実務上の起点は、自社事業と自然との接点、すなわち「依存(自然の恵みにどれだけ頼っているか)」と「影響(自然にどんな負荷を与えているか)」を把握することです。この整理は、後述するTNFDに沿った情報開示の基礎データとしても活用できます。
詳細説明
SBT・SBTiとの関係
気候分野で温室効果ガスの科学的な削減目標を定めるのがSBTで、その目標を審査・認定するのがSBTiです。SBTNはこの考え方を自然分野に拡張したもので、対象は淡水(Freshwater)・土地(Land)・生物多様性(Biodiversity)・海洋(Ocean)の4領域に及びます。企業が自然への影響と依存を踏まえ、科学に基づいて目標を設定するための共通の物差しを提供します。
目標設定の5ステップとAR3T
SBTNは目標設定を「①評価(Assess)→②優先順位づけ(Interpret & Prioritize)→③測定・設定・開示(Measure, Set & Disclose)→④行動(Act)→⑤追跡(Track)」の5ステップで進めるよう示しています。行動段階では「回避(Avoid)・削減(Reduce)・再生と回復(Restore & Regenerate)・変革(Transform)」の頭文字を取ったAR3Tという行動指針が使われ、自然への負荷を段階的に減らす道筋を描きます。
開示・国際目標との連動
自然関連の情報開示はTNFDが枠組みを示し、SBTNの目標設定と補完関係にあります。到達すべきゴールは、2030年までに自然損失を止めて反転させるネイチャーポジティブや、2030年までに陸と海の30%以上を保全する30by30(昆明・モントリオール生物多様性枠組=GBFの目標)と結びついています。中堅企業ではまず、自社事業と自然の接点の把握が出発点になります。
SBT(気候)の自然版/対象=淡水・土地・生物多様性・海洋
出典:Science Based Targets Network
FAQ
Q1. SBTNとは何ですか?
自然への影響と依存を科学的根拠に基づいて評価し、淡水・土地・生物多様性などの目標を設定する国際的な枠組みです。気候のSBTの自然版にあたります。
Q2. SBTとの違いは?
SBTは気候(温室効果ガス)の削減目標です。SBTNは淡水・土地・生物多様性・海洋という自然分野の目標を扱います。
Q3. TNFDやネイチャーポジティブとの関係は?
TNFDは自然関連の「情報開示」の枠組み、ネイチャーポジティブや30by30は目指す「ゴール」で、SBTNはその間の「目標設定」を担う位置づけです。
Q4. 中堅企業は何から始めればよいですか?
まず自社事業と自然の接点(依存・影響)を把握します。特に森林・水・農水産に関わる調達や立地から確認するのが実務的です。
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